2019
8/14
あるIT部門の大きな決断
「IT部門の社員はPMに専念する」(※PM:プロジェクトマネージャー)
以前、ご支援した企業のIT担当役員が発信したメッセージです。
それまでIT部門は、膨大な数のITプロジェクトを担当していました。システム調査、ベンダー調整、社内調整、会議推進・出席、各種資料作成など、やることはキリがありません。
1つのプロジェクトでも大変なのに、それをどの社員も2~3つ掛け持ちしていて、まさしく忙殺されていました。社員はいつも終電で帰り、休日出勤も当たり前でした。
トラブルも多く発生しており、忙しいわりにIT部門の評判は良くありません。周囲から感謝されることも少なく、疲弊した社員は次々と辞めていきます。新しい人が来ても、3年以内にいなくなります。
この問題を解決するため、トップが冒頭の宣言をしました。
社員はプロジェクトの「PM」のみを担当し、それを補佐する「PMO」は全て「外部コンサルタント」という編成になりました。
外部コンサルタントという選択肢を考える
IT部門にとって、外部コンサルタントを使うメリットは何でしょうか?
以下にメリットを挙げてみます。
<IT部門のメリット>
① ITプロジェクトの専門家、即戦力を採用できる
② IT部門の人手不足をすぐに解消できる
③ 不要になれば解約し、恒久的に人件費を払わなくて済む
④ 社員は最低限の人数で効率的に回せる
⑤ 雑務を外に出し、社員はコア業務に注力できる
⑥ 外部人材は、社内政治や保身に関係なく、客観的に行動できる
⑦ コンサルの存在が、ITベンダーへの牽制になる
⑧ プロジェクト経験が豊富で、安定して推進できる
⑨ 外部コンサルが残した資料がノウハウになる
⑩ IT部門全体がレベルアップする
このように、外部コンサルは、使い方次第ではとても効果的です。とりわけ、「PMO」はどのプロジェクトでも以下の共通する役割が求められるため、外部に任せやすいといえます。
・プロジェクト管理(進捗、課題、リスク、費用)
・ベンダー調整
・会議推進、ファシリテーション
・資料作成
では、社員は何をすればいいのでしょうか?
今までは忙しくて手が回らなかった、より重要で本質的な役割を担うのです。「PM」の本来の業務とも言えます。
・経営層との経営戦略・方針とのすり合わせ
・業務トップとの重要項目の調整
・プロジェクト全体の管理、方針の提示
・重要局面での判断、行動
社員は、雑務から解放され「付加価値の高い業務」に専念できるようになります。多くのプロジェクトを無理なく掛け持ちでき、全社的に影響力を行使できるようになります。
忙しくなった時は、社員に踏ん張ってもらう。基本的には、それで正しいと思います。ただ、あまりにもやることが多すぎると、社員は「付加価値の低い雑務」に追われてしまいます。特にプロジェクトを多く掛け持ちすると、「雑務」だらけになります。
もし、社員に付加価値の高い仕事のみを求めるならば、そうでない仕事を積極的に外部に任せる。それがトップの行うべき判断となります。
外部リソースは、必要なときに必要な分だけ活用する。それが、最も合理的で賢い使い方ではないでしょうか。
外部コンサルは手段であって目的ではない
冒頭の企業は、全てのプロジェクトでPMOを外部コンサルで調達し、社員はPMだけを担当します。その結果、数年後には次のようになりました。
・残業が大幅に減った
・離職率が大幅に低下した
・業務部門との関係性が良くなった
・プロジェクトの品質が大幅に上がった
・IT部門の社内での影響力が大きくなった
近年は、どの企業もIT部門の見直しを迫られています。
企業によってアウトソーシングする領域は様々ですが、IT部門の方針が如実に表れる部分でもあります。
貴社のIT部門/情報システム部門は、外部リソースを戦略的に活用していますでしょうか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。