2020
4/15
オンライン会議のカオス
「オンライン会議はむずかしいです・・・」
会議に参加していた情シスのPMOであるAさんのコメント。
今までやってこなかったオンライン会議を試そうということになり、Aさんが準備することになりました。
最初の接続で15分かかり、その後もアプリの操作で手間取り、ほとんど打ち合わせにならなかったとのこと。
音声もハウリングし、一斉に喋りだして混乱し、今は何の議題なのか、その結論は何だったのかも分からず、「カオス」だったようです。
最後にユーザー部門の部長が
「やっぱりちゃんと集まって会議やらないとダメだな」
と発言されたことが、Aさんにはショックでした。
オンライン会議は、慣れないうちは不安でいっぱいです。
親しくない人や偉い方が多く出席されることを想像すると、お腹が痛くなってきます。失敗すると、対面ではないためフォローがしにくく、カオスになってしまいます。
ですが、オンライン会議にはコツがあります。慣れれば難しくありません。
そのコツとは何でしょうか?
オンラインファシリテーションのコツ
オンライン会議は、その場に全員がいないので、誤魔化しがききません。
スムーズに進行するためには「ファシリテーション」の能力が不可欠です。
今回は、オンライン会議におけるファシリテーションのコツを4点、挙げてみます。
① アジェンダと資料の準備が最重要
オンライン会議では、準備不足は致命的です。
表情やジェスチャーで誤魔化せず、ホワイトボードなどの「飛び道具」も使えないからです。
何もない中での手探りの進行は、画面越しに参加者のストレスを増幅させます。画面共有で映す資料がないと、場が白けます。
オンライン会議における参加者との「接点」は、画面共有する「アジェンダ」と「資料」です。この「接点」がないままでは、会議自体が成立しません。
まず、しっかりと準備をすること。たったそれだけで、参加者は安心して議論に集中することができます。
② 先に指名してから質問を振る
オンラインだと、周りの表情や態度が見えにくいので、発言のタイミングが難しくなります。一斉に話し出して被ってしまうことも珍しくありません。
そうならないよう、ファシリテーターが最初に「指名」してから、発言を引き出すようにします。
発言していない人がいれば「指名」する。
結論を言ってほしい人に「指名」する。
話が逸れたら別の人に「指名」する。
ファシリテーターがきちんと「指名」する人であれば、参加者は落ち着いて考えることができます。そして「指名」された時に、ゆっくり発言できます。
③ その場でテキストを打ち込む
議論に軸がないと、話はどんどん逸れていきます。
軸は「アジェンダ」であり、その場で書き込まれる「テキスト」です。
田村は、いつもアジェンダにどんどん書き込みます。
参加者の視線はそこに集中するため、誘導しやすくなります。議論が逸れれば書き込むことを止め、戻ってくれば書き込みを再開します。
重要な発言、論点、結論は、スルーしてはいけません。
自信がなくても書き込みます。間違っていたら、誰かが訂正してくれます。聞き取れなかったら「もう1回お願いします」、理解不足なら素直に「何と書けばいいですか?」と聞いてしまいます。
会議後は、この書き出したテキストを編集すれば、議事録になります。
それを速やかに展開することで、「決定事項」と「To-Do」が抵抗なく受け入れられます。
④ 5分前にはオンライン会議をオープンする
オンライン会議は、接続に手間取る人が必ず出てきます(不慣れな人は、大抵、ジャックの奥まで刺さっていないだけ…)。
それらで開始が遅れないよう、早めに案内を出して接続してもらいます。
会議では、雰囲気をよくするための「アイスブレイク」が重要です。でもオンライン会議では、画面越しにどうやればいいのでしょうか?かなりの高等テクが必要だと感じてしまいます。
そこでお勧めなのが、オンライン会議を早めにオープンすることです。
実は、会議を早めにオープンすることで、勝手にアイスブレイクの場となりやすいのです。
まだ開始時間になっていないので、参加者も雑談をするしかありません。
「そういえば別件ですけど~」
「噂で聞いたんですけど~」
「後で電話しようと思っていたんですけど~」
と会話が始まり、いつのまにか笑いの場になったりします。
サイレント接続した人には「ちゃんと名乗ってよ~」とツッコミをいれるだけでも、場がなごみます。
その雰囲気のまま会議を始めると、積極的な発言を引き出しやすくなります。
リアル会議のように直前まで会議室が「使用中」ということがないのも、オンライン会議のメリットと言えます。
以上の4点をオンライン会議のコツとして挙げましたが、本質はリアル会議と何も変わりません。
手段が異なるだけです。
ぜひ、オンライン会議を得意として「会議室は使い放題」「移動時間の削減」などメリットを享受してほしいと思います。
情シスPMOが率先して手本を見せる
冒頭のAさんは、事前に入念なリハーサルをした上でリベンジしました。
今回は、リアル会議と変わらずに活発な発言が飛び交い、しばらくオンライン会議を継続することになったようです。
ユーザー部門の部長からは「Aさん、次回も頼むよ」とのこと。
テレワーク導入が進む今の状況は、情シスには「チャンス」と言えます。
オンライン会議のソフトウェアをスムーズに操作するだけで、「すごい」「頼もしい」と思ってくれます。大したことをしなくても周りの見る目は変わります。
この「追い風」を利用して、オンライン会議のファシリテーターの立場を確立していきます。ファシリテーションができると頼られます。次のプロジェクトでも、PMOとして指名されます。
貴社のIT部門・情報システム部門は、この状況を「チャンス」に変えていますでしょうか?情シスの「影響の輪」を広げていっていますでしょうか?
関連コラム
コラム更新情報をメールでお知らせします。ぜひこちらからご登録ください。
情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。