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プロジェクトメンバーの人選はどう考えればよいのか?

2021

5/11

プロジェクトメンバーの人選はどう考えればよいのか?

情シスへの丸投げ

「情シスから人を出せばいいのでは?」

経営会議にて、業務部門を統括する役員Aさんが言いました。

来期の目玉として「販売管理業務」の改革を予定しています。個別に細分化された業務を合理的に標準化し、今後の規模拡大に向けての基盤を整理するためです。その改革に合わせて、システムも刷新する予定で「販売管理システム再構築プロジェクト」を立ち上げました。

このプロジェクトの「メンバー選出」の話になった際に、冒頭の発言がありました。

「業務部門は重要案件をたくさん抱えており、とてもメンバーを選出できる状況ではない」
「もちろん業務部門として全面的に協力するが、フルタイムで人を出すことは難しい」

とも言われました。

また、システム導入の技術的な部分はわからないため、できればITの専門家である「情報システム部門(情シス)」が中心で構成してほしい、との依頼でした。

システムの現場ではよくある話ですが、プロジェクトメンバーの人選はどう考えればよいのでしょうか。

プロジェクトの成功確率を高める陣形

まず、ITやシステムに関わるプロジェクトを大きく2つに分けて考えてみましょう。

「IT機器やインフラに関わるプロジェクト」と「業務システムのプロジェクト」です。

前者は「全社的に導入しているパソコンのOSがサポート切れになるため全台入れ替える」「ネットワークの老朽化に伴うリプレイス」「データベースのバージョンアップ対応」「ファイルサーバーのクラウド化対応」「全社的なセキュリティ強化施策」などです。

これらは、業務知識よりもIT知識を求められるため、情シスメンバーが中心で構成すべきといえます。

では後者の「業務システムを入れ替える」または「業務システムを新規に導入する」プロジェクトの場合はどうでしょうか。

このようなプロジェクトの場合、システムの前に「業務の目的は何か」「業務のあるべき姿はなにか」「顧客は誰か」「関係部署はどこか」「組織と役割をどう変えるべきか」という、そもそも論からスタートします。

なぜなら、システムはそれら業務の目的を具現化したにすぎないからです。

そのため、議論は社内を横断した全社的な話となります。

システム導入後に高い効果を得るためには、現在の業務をドラスティックに変えていく必要もあります。しかし変化が大きければ大きいほど、現場の反発もかなり強くなってきます。その反発に立ち向かい、現場の協力を引き出し、進めていかなければなりません。

それなのに「ITには詳しいが、業務は素人」がプロジェクトを進めた場合、どうなるでしょうか。

おそらく業務側の担当者は、ろくに話もしてくれないでしょう。話をしても、業務がわからない人には伝わらないからです。ただでさえ変化に慎重になっているのに、業務の素人に何を託せるのでしょうか。

つまり、情シスだけで無理やり進めても、業務で使われないシステムが出来上がるだけです。

そのためプロジェクトを推進していく中心メンバーは「業務部門」が不可欠です。

特に「プロジェクトマネージャー」と「プロジェクトリーダー」は、プロジェクトの象徴であり、成果に直結します。当事者として業務的に信頼されている人物がふさわしいのです。

また、業務的に連携する部門(例えば人事部や経理部)からもメンバー選出は必要です。影響範囲が広くなればなるほど、多くの人を巻き込み、支持してもらうことが不可欠です。

では、情シスはいらないのでしょうか?

そんなことは全くありません。なぜなら、主役である業務部門はプロジェクトに「不慣れ」だからです。そう何度も、その部門にとってのシステム導入があるわけではないからです。基幹システムともなると、せいぜい5年に1度、10年に1度のペースでしょう。

だからこそ、いつもプロジェクトに関われる情シスが「PMO」として、「プロジェクト管理」や「ファシリテーション」を行うことに価値があるのです。

もちろん、情シスにはITベンダーと技術的な話をしたり、自社のIT基盤の調整やインフラの全体設計を行ったりする「ITの専門家」としての役割もあります。

ただ、そこに甘んじるのではなく、もっとプロジェクトの中枢にいくべきです。その方が会社への貢献度も大きくなり、やりがいも大きくなります。

つまり、プロジェクトメンバーの構成は、業務に影響のある部門からそれぞれメンバーを選出しますが、その中心メンバーは業務部門であり、それを支える情シス、という構図が望ましいといえます。

人選は会社の意思の表れ

プロジェクトメンバーの人選は、会社の本気度が表れます。特に言葉に出さずとも、経営トップの意思は周囲へ明確に伝わります。

会社で「エース」と呼ばれる人材で構成されたプロジェクトを見るだけで

「このプロジェクトは会社も超本気なんだな!」

と伝わります。当然ならがプロジェクトは周囲も真剣に協力し、熱を帯び、全社を巻き込んだ動きが自然と出てきます。

貴社のプロジェクトは、重要プロジェクトに業務部門のエースを選出できていますでしょうか?

また、情シスメンバーはどこに名を連ねていますでしょうか?

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情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。