2022
5/03
RFIは、Request For Informationの略で、情報提供依頼書のことです。
このRFIについては、当社ではベンダー選定における「発明」と考えていますが、それには理由があります。RFIには、RFPとは全く異なるメリットが多数あります。そのメリットを6つに分けて解説します。
(1) インターネットにない情報収集
ベンダーやシステムの情報収集には、インターネットが欠かせません。様々なホームページや製品・サービス紹介ページを参照し、情報を集めていきます。
ここで問題となるのが、各サイトで、情報の粒度も書き方も全く異なるということです。調べた事がある人は分かると思いますが、本当にいろいろな情報が溢れ返っています。参考になるサイトもあれば、全く参考にならないサイトもあり、まさに「玉石混交」です。
「業界関係者の支持率ナンバーワン」ってどこの業界の人?
「圧倒的実績」と書かれてあるのに、実績はどこに書かれてあるの?
「A社とB社の比較」のA社とB社はどこのこと?
と、いろいろ突っ込みたくなるサイトも多くあります(笑)。
ベンダー側の立場だと、宣伝・広告ページなので、自分たちがアピールしたい内容だけを書くのは当然かもしれません。アピール内容を、ここぞとばかりにふんだんに盛り込んでいます。逆に、自分たちに不都合な真実や、他社と比較されると困ることは1mmも書いていません。「ウチは他社より性能が悪いんです」は書かなくて当然です(笑)。
その結果、各ベンダーのページは、情報の内容も粒度も全く異なります。バラつきがありすぎて、比較できないのです。言い換えると、選定する側のほしい情報が揃っていない、ということです。
そこで、比較できるようにRFIで「統一フォーマットによる質問」を投げます。
・パッケージの標準価格はいくらなのか?
・具体的な導入実績は?
・業界固有のXX機能には対応しているのか?
などを確認していきます。
RFIを使うことで、インターネットに載せていない「比較するための情報」を集めることができます。
(2) メールでロックイン回避
ベンダーに接触する際、通常はベンダーのホームページにある「問い合わせフォーム」に入力します。すると後日、メールで「お問い合わせありがとうございます。まずは一度ご挨拶させてください。候補日時は~」と返ってきます。ベンダー営業は、まずは「会う」ことが第一ゴールなので、執拗にアポを入れてきます。
しかし、RFIの段階ではベンダーと会ってはいけません。
「ロックイン」されるからです。
RFIでは、広くベンダー情報を収集します。そのため、多くのベンダーにRFIを投げます。そのベンダーにいちいち会っていたら、時間がどれだけ会っても足りなくなってしまいます。ベンダーは、一度接触してきた「見込み客」を簡単には手放しません。顔合わせの打ち合わせ、状況ヒアリング、課題解決のための提案打ち合わせ、前回指摘を反映しての再提案と、1ベンダーあたり最低でも3~4回の打ち合わせを求めてきます。
強引に1回目で区切ることもできますが、精神的に疲れてしまいます。
呼んでおきながら「もう来ないで」と言うには、かなり負い目に感じるからです。
そこで、ベンダーからメールが来たら、次の3点を盛り込んで丁寧に返信します。
・貴社の製品に興味を持ったので、RFIを送付しても良いか?
・まだ検討段階で、直接お会いして提案を受ける状況にない
・メールベースでRFIの回答を頂きたいがよいか?
ベンダーの返信で同意を得られたら、RFIを送ります。もし、それでも「会いたい」と言われたら、「すみません、予算化されるかも分からない状況で、計画も未定です。現時点ではお会いできる状況にございません」と丁寧に返します。他に良い理由があれば、それも織り交ぜ、ベンダーにメールによる情報提供の同意を取り付けていきます。
なお、急に「RFI」という言葉を出して、ベンダーに伝わるかどうか不安になるかもしれません。
しかし、ベンダー側でRFIを知らない方が問題です。そのベンダーはモグリです(笑)。仮に知らなくてもGoogle検索して、知っている体で回答してくるはず。
実績のあるベンダーであれば、何度もRFIを受けているので、知らないことはありません。大手ベンダーにもなると手慣れていて「あ~、はいはい、RFIですね。全然問題ないですよ~」という反応です。ベンダー側でも回答テンプレートも用意されていて、返信に負担がかからないようになっています。
RFIをメールベースでやりとりすることで、自社側もベンダー側も、お互いが効率的にコミュニケーションをとることができます。
(3) 大量に出せる
多くのベンダーに問い合わせをするのは、かなりの労力がかかります。ベンダーの数だけ個別対応が必要となるからです。
RFIでは、メールのみのやりとりです。
ここに追加のメリットが生まれます。
RFIで質問を「固定化」する。メールの文面も「固定化」する。回答後のお礼メールも「固定化」する。全てを「固定化」することで、コピペで回すことができます。イレギュラーな個別対応をなくすことで、10社以上に対しても、対応することができます。
1つだけ注意点としては、ほぼ全てが「使いまわし」なので、別の「社名」や「名前」が残ったままとならないようにすること。テンプレートを作る際に、変数の部分は「XXX」など、分かりやすくしておくと良いでしょう。
(4) NDA不要
通常、RFPを出す際は、自社の情報を大量に提示するため、事前にNDA(秘密保持契約)を締結する必要があります。
一方で、RFIは、自社の情報は提示しません。ベンダーの情報を一方的に受け取るだけなので、自社の情報流出の心配はありません。そのため、NDAは不要になります。
そもそも、10社以上に対して、NDAを結ぼうとすると、それだけで自滅してしまいます。お互いのリーガルチェックを経て、メールで文案の調整を行うため、RFPを出す前に膨大な時間と労力を要してしまいます。
RFIでは、自社の情報は開示しません。もしベンダーから「何か御社の状況が分かる資料がほしい」と言われても、「予算も計画もこれから」と丁寧に断ります。
(5) 足切りできる
RFIでは「広く浅く」情報収集します。この段階では、細かい機能の詳細は見ません。細かく加点方式でポイントを積み上げていくと、ベンダーの数が多いため、終わらなくなります。致命的な情報を拾い上げて「足切り」する事が目的となります。
例えば、絶対に必要な機能がない、ベンダーの財務状況が大赤字、価格が高すぎる、などです。
また、ベンダーによっては、「提案に自信がない」「人が出払っていて体制が組めない」などの理由で、先方から断ってくる場合もあります。RFIは大量のベンダーに送るので、可能性のないベンダーが最初の段階で辞退してくれるのは、こちらとしても大変ありがたいことです。
可能性の低いベンダーは、勝手にフィルターに引っかかって、候補から自然と外れていきます。当社の経験上、全体の1割~2割ぐらいは辞退してきます。そこをあらかじめ想定した上で、幅広くベンダーに声をかけていきます。
(6) 一発勝負を避けられる
RFIにおける一番のメリットは「一発勝負」を避けられること。RFIの存在価値といっても良いぐらいです。
当社に来るユーザー企業の相談事のうち、一定数は「RFP後に失敗した」です。
RFPを出して、提案を受けたが、どのベンダーにも決定できずに、プロジェクトが止まってしまった、というものです。
そこで経緯を確認すると、必ず「RFIは出していない」と言われます。
では、RFPで提案をお願いしたベンダーをどうやって決めたかというと「知っているベンダー」とか「ネットで検索して見つけた」とのこと。何社を探したかを聞くと「3社~5社」と答えます。
つまり、最初に「幅広く」リストアップしていないのです。パイの数が何個あるか分からないけど、とりあえず視界に入った3社にRFPを出した、ということです。
RFPを作るまでに、自社側では多くの関係者を巻き込み、大変な労力を費やします。ベンダー側も多大な労力をかけて提案してきています。
それなのに、RFPに基づく提案を受けて「どれもイマイチ」というのは、プロジェクトの面子にもかかわります。メンバーの誰もが「失敗」を口にはしたがりません。なかなかそこで「立ち止まる」という勇気は持てないのです。
実際のところ、予算が大幅に超過しようが、要求とのギャップが大きかろうが、消去法でそのままどこかに決めてしまいます。このようなケースは全国で非常に多いのでは、と私は推測しています。
つまり、RFPのフェーズに入ってしまうと、基本的にそこから先は戻れません。「一発勝負」の世界です。その一発勝負の「候補」を特に根拠もなく選出してもいいのでしょうか?
ベンダー選定は企業にとって非常に重要。だからこそ、慎重に進めるべきです。「石橋を叩いて渡る」ことが求められます。特にパッケージの選定においては、自社の業務にフィットするかどうかが全てです。ベンダーの力量は二の次です。
だからこそRFIが必要です。
ベンダー選定は、最初に幅広く探すことが重要です。「一発勝負」を避けるためにRFIは不可欠と言えます。
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RFIの主な質問項目
RFIの初期段階でベンダーは何社探せばよいのか?
RFIの段階で現行ベンダーはどう扱うのか?
RFIの段階でベンダーに会ってはいけない4つの理由
RFI回答は順位を決めるものではない
RFI回答における3つのノックアウトファクターとは?
RFI(情報提供依頼書)とRFI回答シートの作り方(サンプル画像付き)