2022
5/07
RFIはメールが鉄則
RFIで情報収集する段階では、ベンダーと会ってはいけません。
メールで完結させることが重要です。その理由を4つ挙げます。
【理由1】後で断りにくくなる
直接会うことで「親しみ」を覚えるのは、メリットでもありデメリットでもあります。RFIの段階では多くのベンダーと接触します。その結果、多くのベンダーが見送りになります。そのことは、最初から分かっていることです。
直接会っていると、多くのベンダーに丁寧な断りの連絡を入れないといけません。営業の顔が見えるので、断る心理的な負担はかなり大きくなります。
その後も「やはり見直していただけませんか」「理由をお聞きしたいので、一度会ってほしい」「何度か電話しましたが離席中とのことでメールいたします」「前回とは別の提案を準備したので説明させてください」と営業の攻勢は続きます。
想像してください。何も悪いことをしていないのに、電話越しに電話に向かって、何度も何度も頭を下げてお詫びし続ける。それを何度も。想像するだけで、大変な苦行です。
これが3社程度なら、何とか頑張れます(それでもキツイですけど)。これが5社、10社となったら、どうなるのでしょうか。。。
マジメな人や責任感の強い人ほど、メンタル不調に陥ります。罪悪感を自己処理できなくなるからです。
【理由2】時間がかかりすぎる
会うというプロセスは、事前と事後のプロセスも含めて、膨大な時間がかかります。
まず、会うための日程調整。これが3社程度なら、大変ですが何とかなります。ところが10社程度になると発狂レベルです。
1社目でこちらの候補日時を3つ出して、2社目で候補日時を3つ出して・・・とやっていくと、3社目で1週間が埋まります。4社目は候補日時すら出せません。
打診したベンダーも即座に返信をくれればまだ進みますが、大抵は「ありがとうございます。社内調整して折り返します」で数日間、回答がもらえません。会議室も仮押さえしているため、社内で苦情が来たりもします。
しかも数日待たせるようなベンダーに限って、その後に「あいにく埋まっておりまして、XXXXかXXXXのご都合はいかがでしょうか?」と逆提案してきます。「いやいや、無理だから候補日時から外しているんですけど」とつぶやきながら、日程調整は振り出しに戻ります。結局、その翌週から再調整となり、ズルズルと日にちが過ぎ去っていきます。
ようやく日程が決まったら「会う」わけですが、これも単純に時間がかかります。変に競合ベンダーがばったり鉢合わせにならないように感覚を空けるので、多くてもせいぜい1日3社ぐらいです。前後はバタバタと会議室をとったりプロジェクトメンバーを案内したり、その日が潰れます。各ベンダーも熱心に必要以上の提案をねじ込んでくるので、話を聞くだけでも疲れます。
会うからには、この場で聞きたいことを全部聞いて完結させようと、こちらも質問をいっぱい投げます。質疑応答時間はオーバーし、参加メンバーの質問が尽きるまで、続きます。
しかし、それがアダとなります。ベンダーも全てを回答できるわけではなく「後日、回答させていただきます」「後ほど詳細資料を送ります」と打ち合わせ後にも、延長戦が繰り広げられます。
営業は一度会うと、その繋がりを断たれないよう、会った後もお礼メールから始まり、質問攻め、資料送付は続きます。定期的に状況確認メールが来るようになります。
これらが5社、10社と続くわけで、メールボックスはカオスです。いや、メール地獄となります。
【理由3】情報が偏り、判断がよじれる
顔合わせの場では、ベンダーの営業担当者が熱心に自社のパッケージやサービスを紹介します。どこの営業もプレゼンテーションは上手。魅力たっぷりにパッケージやサービスの特徴、メリットを語ります。無防備に聞いていると、欠点なんか一つもありません。
欠点はなくて当然です。自社に不都合なことをわざわざ説明する意味がないからです。つまり、相手の土俵で、一方的に良い情報だけを受け取る形になります。
この状態で選定を進めるとどうなるか?
営業プレゼンの良し悪しだけで、決めることになります。パッケージの評価ではなく、営業の評価になります。極端に言えば、パッケージの出来が悪くても、営業の腕だけで、選定に残り、逆に営業が冴えなければ、パッケージが良くても落選します。
これは、受け取った情報を比較表に落とし込むと良く分かります。
評価項目が全く網羅されていないのです。そのベンダーの強みの部分だけ書き込まれ「評価:◎」が付きますが、他の項目は空欄のままです。各社で空欄の部分がまちまちです。これでは、公平な評価などできません。
営業の「印象」というパッケージとは全く関係のない「ノイズ」が幅をきかせ、選定を狂わせていきます。
【理由4】逆に失礼
「会う」ことはベンダー側の時間も大量に奪います。自社に会う前に提案準備、資料作成、ヒアリング準備、社内のリソース調整など、我々に見えない所でも、かなりの時間を費やしています。
これらの苦労が最終的に実るであれば、問題ありません。
ところが、可能性のほとんどないベンダーに対してまで、その気にさせて振り回すのは失礼です。結婚詐欺のようなものです。説明を聞いた結果、あきらかに可能性がないと分かるベンダーも一定数は発生します。
先方の営業も、最初はテンション高く説明します。ところが、質疑応答で可能性がないことを察知すると、急に「終戦モード」となります。「今までの苦労は何だったのか」と振り返りながら、口数が少なくなっていきます。こちらも申し訳ない気持ちでいっぱいになり、早くこの場を終わらせることばかりを考えます。
明らかに、お互いにとって不毛な時間となります。
ベンダーへの配慮として、先方の時間をムダに奪わない。最低限の「ビジネスマナー」と考えます。
会うことを大事にするからこそ今は会わない
なぜ、ここまで力説するかというと、私が昔、まさに失敗したからです。RFIを出した全ベンダーに会って、死ぬような思いをしたからです。
あの時は本当に辛かった。最初のうちは勢いで進めていましたが、夜もだんだんうなされるようになり、睡眠障害にもなりました。あの時、さらに一押しあれば出社拒否になっていたでしょう(苦笑)。
ベンダーと「会う」ことは、決して否定しているわけではありません。むしろ会わないと得られないメリットが多いのも事実です。
ただし、数が多いとメリットよりもデメリットの方が多くなります。
だからこそ「会う」相手を事前に選別することが重要となります。無差別に会うのではなく、強弱をつけて、可能性の高いベンダーだけ「会う」。それ以外は「会わない」という明確なルールで進めていきます。
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