2022
10/26
社長への相談
「わかった、俺が何て言えばいいか教えてくれ」
ある現場では、基幹システム再構築プロジェクトのキックオフを迎えます。
そこでプロジェクトマネージャーのAさんは、社長にプロジェクトについて「メッセージ」を発信してもらうようお願いに行きました。
社長は忙しいので、予定の隙間をぬって時間を作ってもらいました。
Aさんは「断られたらどうしよう」と不安でした。
私は「絶対に大丈夫」と説得しました。
いざ相談してみると、社長は快諾します。
さすが社長です。
その意味を瞬時に理解しました。
そして、社長はプロジェクトについて矢継ぎ早に質問してきました。
社長は「メッセージ」について、どう理解したのでしょうか?
困難だからこそお願いする
プロジェクトはいつも大変で困難です。
だからこそ、プロジェクトを組んでいます。
イージーなものはプロジェクトとは呼びません。それは社内タスクとして処理すればいいだけです。
部を横断し、全社的に大きな影響があるからこそ、プロジェクトとして活動するのです。
その最たるものが「基幹システム再構築プロジェクト」でしょう。
この手のプロジェクトは、必ず苦しい場面が訪れます。
現場のやり方を大きく変えようとするから、反発も大きいのです。
「今の仕事がなくなる」「頼られる立場を失う」と不安になった方々が抵抗勢力と化します。
そのため、新システムの欠点を突き「今までできていたことができなくなる」ことを問題視します。
または外部の顧客を盾にとり「迷惑をかけるのか」と迫ってきます。
現場を今まで担ってきた自負もあり、そこに土足で踏み込んでくる(ように見える)プロジェクトを「敵」と見なしてきます。
そんな時に効いてくるのが「トップメッセージ」なのです。
トップメッセージがチャレンジングする組織の基盤となる
トップメッセージとは、社長からプロジェクトの重要性を発信してもらうことです。
(トップメッセージの効用)
・全社員がプロジェクトを重要な活動と認識する
・プロジェクト活動が全社公認で優先してもらえる
・現場から反発があったときに「社長命令」と言える
・社長の後ろ盾をプロジェクトメンバーが感じて踏ん張れる
・結果、社内全体の推進力が増す
では、このトップメッセージはいつ発信してもらうのが良いのでしょうか?
それは「最初」です。
現場が炎上した後では遅いからです。
社長の介入で鎮火できますが、既にできてしまった溝は深く、シコリは残ります。
そうさせないために、炎上する前に言ってもらうのです。
このプロジェクトは「最重要プロジェクト」だと、最初に意識付けをしておくのです。
そして、その後も「常に」発信し続けることも重要です。
常にトップから発信することで、全員の潜在意識に刷り込みます。
「全社的に前を向いて進める」という共通意識が、困難なプロジェクトを成功させる「基盤」となります。
自社にとって重大で困難なプロジェクトだからこそ、トップメッセージは必須です。
プロジェクトマネージャーは、社長にトップメッセージを依頼することも重要な仕事です。
その時に発信内容を聞かれますが、内容は何であってもいいのです。何であっても効果的です。
トップメッセージの発信は「最初」に、その後も「常」に発信してもらうことが重要なのです。
トップメッセージは未来に効いてくる
「他社にできてウチにできないはずがない」
「今のやり方にこだわらず、パッケージの機能で業務フローを変えること」
翌月の社長挨拶で、プロジェクトの重要性を力強く発信していただきました。
現場ユーザーにとってもトップメッセージは重い。必ず頭の片隅に残ります。
プロジェクトメンバーも励まされました。何があってもやりとげようと心に誓います。
これから、このプロジェクトはいくつもの困難が待ち受けていることでしょう。
その時こそ、このメッセージがジワリと効いてくるのです。
貴社のプロジェクトは「トップメッセージ」がきちんと発信されていますでしょうか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。