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IT戦略を経営企画部に作らせるから情シスが下請けになる

2022

11/09

IT戦略を経営企画部に作らせるから情シスが下請けになる

戦略はすべて経営企画部が作る?

「なぜウチでIT戦略を作らないといけないんですか?」
「それは経営企画部の仕事でしょう?」

ある現場で、情シス部長がグチをこぼしました。

業務分掌を考えると、「戦略」や「企画」を行うのが経営企画部となっています。

そのため「経営戦略」は、経営企画部が作ります。その構成の一部である「IT戦略」も経営企画部が作るべき、との考えです。

確かに経営戦略とIT戦略は整合性が必要です。

そこのベクトルが合わなければ、会社の限りあるリソースを効果的に投入できなくなり、経営目標を達成できなくなります。

ただし、経営戦略とIT戦略は、必ずしも同じ組織が作らないといけないものなのでしょうか?

このIT戦略は、どこが作るべきなのでしょうか?

戦略策定は全体のレールを敷くこと

率直にいうと、IT戦略をつくるのはメチャクチャ大変です。

IT戦略は、業界によって、企業規模によって、また会社ごとに置かれている状況によって、全く違うものになります。

そのため、正解があるわけでもなく、ベストプラクティスも存在しません。

そのため、IT戦略の立案は、正解のないところに「リスク」をとって自社の方針を表明しないといけません。

しかし・・・、だから何だというのでしょうか?

リスクをとるからこそ、現状を打破できます。

情シスとして存在感を放つことができます。

「餅は餅屋」という言葉があります。

IT・デジタルに最も詳しい部署はどこでしょうか?

もちろん情シスです。

だからこそ、その最上流であるIT戦略を策定するのも情シスであるべき、というのが私の主張です。

計画を誰かに渡すのは、簡単だし楽です。

しかし、それは「主導権」を渡すことになります。

その後に待っているのは、計画者からの「指示」であり、指示を受ける組織は「下請け」になります。

ましてや、計画をたばねる「戦略」を別の誰かがやるなら、次から次へと指示がきて、誰かが敷いたレールの上を走るだけの恒久的な「下請けの仕組み」ができあがります。

いったん、その仕組みができあがってしまうと、後からその流れに逆らうことはほとんど不可能となります。

だからこそ、情シス部長が、主導権をとってIT戦略を策定すべきです。

誰がイニシアティブをとるのか

「そうはいっても、ノウハウも経験もなく、どうすればいいのか?」

もし、このような場合は、一時的に外部の力を借りればいいと思います。

初速さえつけば、後は自力で回せるようになります。

ずっとコンサルタントが必要なわけではありません。必要なときに必要な契約をすればいいだけです。

さらに言えば、仮に経営企画部にIT戦略を任せたとしても、その裏では同じように外部コンサルを利用しているだけです。

どこの部署がイニシアティブをとるか、という話です。

情シスで立案することが重要です。

保守の担当者が「できない」というならわかりますが、情シス部長がその姿勢ではいけません。

配下のメンバーも見ています。推進する背中を見せる必要があります。

情シス部長が下請けのスタンスなら、情シス全体が下請けの組織になります。

他部署に手綱を握られて、コントロールされるだけです。

ひと昔前までは、それでもよかったのでしょう。

経営者が指示する基幹業務をシステム導入することが最優先でした。

しかし、その結果として、情シスがどこも受け身となり、その状況を経営者が嘆いている「自作自演」に見受けられます。

一方で、今はDXの時代です。IT・デジタル技術を駆使して、ITドリブンで業務・組織・社会を変えていく時代です。

そのIT・デジタルに明るい部署から、IT戦略を提案するのは当然のことでしょう。

情シスの役割は部長のスタンスによって決まる

「情シスが受け身」
「保守しかやってくれない」
「余裕がない」
「提案してくれない」
「業務に踏み込んでこない」

いろいろな現場でこのような愚痴を聞きます。

そして「情シスにはDXは無理」と結論づけられます。

しかし、それは元をたどると情シス部長がその方針だからです。

情シス部長が「保守」「インフラ」「ヘルプデスク」しかやらないスタンスだからです。

これらの業務の共通するところは「発生ベース」で対処すること。誰かからの問い合わせや指示を受けて、動くタイプのものです。

この業務だけをやっていると、積極的な提案や企画などのスキルを伸ばす機会がありません。

逆に、情シス部長が自らIT戦略を指し示し、自ら敷いたレールを走り、積極的にプロジェクトを立ち上げるなら、情シス全体が積極的になります。

DXを進めたいなら、まずは情シスがその姿勢を鮮明に打ち出すことです。

攻めの情シスへ

冒頭の現場、あれから3年が経ちました。

情シス部長をフォローしてIT戦略を立案し、多くのプロジェクトを実行してきました。

その情シス部長は、経営層と定期的に打ち合わせを行っています。

事業部門からも、重要な会議には必ず情シス部長が呼ばれて、意見を聞くルールになりました。

全社的な会議で、新システムの説明をする機会も増えています。

つまり、情シスの存在感が大きくなり、影響力も増してきました。

もう「受け身の情シス」とは呼ばれることもありません。

*****

情シスが経営層や事業部門の下請けになるか、横並びのパートナーとなるか。

その最も大きな分岐点は、最も上流であるIT戦略立案を「情シス」がとりにいくかどうかにかかっています。

貴社のIT部門・情報システム部門は、IT戦略立案をとりにいっていますでしょうか?

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情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。