2023
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経営層の決まり文句
「他社はどれくらいお金をかけているの?」
新システム導入の企画を説明する際、必ず経営層に聞かれる言葉です。
「いや~、どうなんですかね?」と返してしまうと、まったく説得力がありません。
情シスの部長やCIOなどの責任者クラスは、経営層に説明する機会が非常に多いと思います。
すると、必然的に説明する資料(提案書・企画書など)をたくさん作っていくことになります。
経営層の「千本ノック」のような質問に答えられるかどうかは、資料に「説得力」があるかどうかにかかっています。
資料にこの説得力を持たせるためには、どうすればいいのでしょうか?
公開資料を活用しない手はない
いくらその資料が良くできていて、主張に熱を込めたとしても、裏付けがないと聞いている方は疑心暗鬼になります。
資料に説得力をもたせるには「客観的な数字」が重要です。
そこで活用したいのが、国や公的機関の「公開資料」です。
公開元が信頼できる団体であれば、その内容も信頼できます。
これら資料は、各種調査やアンケートの集計結果がキレイにまとまっています。
種類別や業種別、規模別など、様々な切り口で調査し、それがグラフ化されています。
これを活用しない手はありません。
このような公開資料は、実はたくさんあります。
今回は、情シスの責任者が知っておくと絶対に重宝する公開資料をピックアップしてご紹介します。
① JUASの「企業IT動向調査」
情シス責任者が、毎年悩みながら格闘する数字はなんでしょうか?
それは「IT予算」です。
インフラ、基幹システムなどの「守りのIT」、最新テクノロジー活用、DXなどの「攻めのIT」、これにどれぐらいの金額を配分すればよいのでしょうか?
JUASとは、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の略称で、中立的なITユーザーの団体です。
このJUASが公開している「企業IT動向調査」には、その統計結果が載っています。
「ウチの業界での予算平均は~」といった説得力のある説明が可能となります。
他にも「DX」の取り組み状況や、「IT組織の役割」の状況など、情シス責任者にとっては、非常に興味深い内容が載っています。
他社動向をおさえるために、本資料は欠かせません。
② JNSAの「インシデント損害額調査レポート」
システムの企画で最もむずかしいのが「セキュリティ対策」です。
これを導入したところで、売り上げが上がるわけではありません。
ユーザーの負担が軽減されるわけでもなく、むしろ増えたりもします。
そのため、なかなか経営層に響く投資ではありません。
しかし、一度でもセキュリティ事故を起こしてしまったなら、その被害は甚大です。
そんな時に活用したいのが、JNSAが公開している本レポートです。
JNSAとは、特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会の略称で、ネットワークセキュリティに関する啓発、教育、調査研究及び情報提供などを行っています。
例えば、個人データが流出した場合に、会社が支払わなければならない「1人あたりの平均想定損害賠償額」が載っています。
これを積み上げていけば、損害賠償金の金額は、数千万円から数億円になるケースもあるでしょう。
セキュリティリスクは金額換算しないと、経営層には響きません。
セキュリティの企画には必須の資料といえます。
③ 総務省の「情報通信白書」
この資料の特徴は、広く浅く、全般的な統計が載っていること。
パブリッククラウドサービス、AI、仮想空間、サイバーセキュリティなど、各ICT市場の動向が掲載されています。
自社で企画する資料の裏付けとして、市場動向の文脈で客観性をもたせるために活用できます。
他にもたくさん公開資料はありますので、ぜひ目的に沿った資料を探してみてください。
情シス責任者は公開資料にアンテナを張り巡らせる
「他社はどれくらいお金をかけているのか?」に対して
「それは次のページをご覧ください」と返すことで、一気に説得力が高まります(説明する方も気持ちよくなります笑)。
情シスの責任者にとって、経営層への説明は必須機能の一つです。
そのためには公開資料にアンテナを張り、常にアップデートしておくことが重要です。
貴社の情報システム部門/IT部門は、提案書や企画書で「公開資料」をうまく活用できていますでしょうか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。