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情シスの資格戦略

2023

8/31

情シスの資格戦略

資格の種類は豊富

「情シスとして、どの資格をとればいいですか?」

20代後半の若手から、質問を受けました。

いいですね!そのヤル気がまぶしいデス!

ITに関する資格は、たくさんあります。国家資格も民間資格も、種類は豊富。ありすぎて迷うのもわかります。

最近では、情シスも内製力を強化しているので、ベンダー向けの技術系資格を取得するケースも増えてきました。

遠い昔の話ですが、私も15年前まで、資格に熱心でした。

当時のIPA資格を7つ取りました(シスアド、二種、一種、DB、アプリ、プロマネ、システム監査 ※当時の名称)。

そのおかげで、私は今があると感謝しています。その経験をふまえて考察してみました。

情シスとして、どのように資格と向き合っていけばよいでしょうか?

資格は実践でつかえるのか

資格の前提として「知識が身につく」はあると思います。

客観的かつ体系的に、その領域の知識を身につけるには、とても良い方法だといえます。

ただ、現場で使える知識かどうかは別だとも感じています。

資格によってバラツキはありますが、身につけた知識がそのまま現場で活用できるケースは稀でしょう。

資格は広範囲な知識が求められますが、特定の現場でしか問われない知識や、現場ルールの縛りを受けて使えない知識も散見されます。

正直、現場のパフォーマンスを上げるなら、現場の稼働を上げて、実践で鍛えるのが一番です。

当然、そこで未知の課題にぶち当たるわけですが、上司や同僚に教えてもらうか、その領域の専門書を何冊か読んだ方が得られるものは大きい。

つまり「現場で必要な知識を身につける」だけが目的なら、資格は1つの選択肢にすぎず、やや間接的な手段といえます。

では、資格は意味がないのでしょうか?

そんなことはありません。もっと別の軸で、資格は大いに助けになります。

資格の効用

① 市場価値が上がる

資格は、自己スキルの客観的な証明になります。高度な資格を持つことで市場価値が上がり、「転職」で有利になります。特に「学歴」や「職歴」が薄い人にとっては、それをカバーするアピールポイントとなります。
実際に私もその恩恵を受けた一人です。ベンダー時代に、コンサル会社への転職を考えていましたが、すべて門前払いされました。コンサルは学歴重視であり、私には学歴がなかったからです。
そこで、プロマネとシステム監査の資格をとって、再活動しました。すると、資格を評価してもらえ、なんとかコンサル会社に転職することができました。資格がなければ、この道に進めなかったと思います。
今では、情シスの採用活動も支援していますが、採用担当に話を聞くと、資格を持っていると印象がかなり良いそうです。

② チャンスを得られる

資格は、転職に限った話ではありません。
もし自身のキャリアパスを考えて、今とは違う領域にシフトしたいなら、その領域の資格を取るのが近道です。社内で絶好のアピールとなり、周囲にヤル気も見せることができます。上司は「そんなにやりたいなら、やらせてやるよ」と背中を押してもらえます(状況によりますが)。
つまり、資格は新しい領域への「切符」といえます。
私も昔、バッチ処理を担当していましたが、ファイル処理ではなくDB処理をやりたくなりました。そこで、データベーススペシャリストの資格をとり、現場でアピールしまくります。その1年後、配置転換してもらえました。

③ 自信がつく

資格勉強とは、自分と向き合う「1人時間」を確保することが不可欠です。遊びたい誘惑に打ち勝ち「自己管理」ができた証明にもなります。そして、自分に投資し、結果がついてきたことは、すごく自信がつき、誇らしく思えます。
新しい領域は、誰でも最初は初心者であり、恐怖に襲われます。その領域の経験がまったく無くても、資格があることで「自分はやれる」と根拠のない自信がわいてきます。それでいいのです。未知の領域に、前を向いて進むことができます。

資格戦略

資格戦略としては、あえて「資格はチャンスを得るため」と割り切った方がよいと考えます。

そのチャンスをモノにして、そこで新たな経験と実績をつくる。すると、また新たにチャレンジしたい領域が見えてくるので、その資格を目指す。

「資格→実績」「資格→実績」とサイクルを回すことで、自身の描いたキャリアパスが着実に道となっていきます。

これは、経験や実績の少ない若手の方が、効果が高くなります。

年をとると、だんだん「資格」よりも「実績」を見られるようになるからです。資格が多いのに実績が伴っていないと、逆に疑われてしまいます。

資格をチャンスに変え、いろいろな領域を経験する。そこで自身に合った「天職」が見つかれば、今度は領域を「シフト」するよりも「深掘り」する方向に向います。

そうなれば、新たな資格をとるよりも、その領域の実績を積み上げるフェーズに入り、資格の必要性は薄れていきます。

実際に私も、ここ10年以上、保有資格を示す機会はまったくありません。プロフィールは、実績を優先して書くようになりました。

資格は背中を押してくれる

話を「どの資格をとった方がいいか?」に戻します。

まず、今すでにもっているスキルではなく、今から目指すスキルの資格が良いでしょう。

そのためには、自身の「キャリアパス」を整理する必要があります。なるべく解像度の高い将来のイメージを描き、その目的地に向けてアピールとなる資格を選ぶことです。

そして、後はひたすら勉強するのみ!

資格のよいところは、自分を追い込めることです。これだけ自分の「時間」と「お金」を投資したのだから、合格しないと「割に合わない」と思えます。それがよいのです。時間をかければかけるほど、後に引けなくなります(苦笑)

結果として、資格は自身の退路を断ち、新しい道へと背中を押してくれるのです。

新しい領域に足を踏み入れると、新しい景色が見え、新しいテーマが見えてきます。その繰り返しで、自分にしか描けない「奇跡のキャリアパス」ができていきます。資格をトリガーに、無理筋のルートが開拓されています。気づけば「すごい山に登ってきたもんだ」と振り返ることもあるでしょう。

ぜひ、自身の野望に向けて、資格を活用してください!

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御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。