2024
8/08
話が噛み合わない
「毎月、ステコミ報告をお願いしますね」
「はぁ・・・」
ある現場で、新しく契約したベンダーと要件定義がスタートしました。
そこで、情シスAさんは、ステアリングコミッティ報告(以降、ステコミ)を依頼しました。
ところが、ベンダーPMの反応が良くありません。「それって必要なんですか?」がわかりやすく顔に出ています(苦笑)
ステコミの一週間前となり、不安になった情シスAさんは、ベンダーPMにステコミ資料の事前提出を求めました。
そこで出てきたものは「週次定例会」のエクセルそのものでした。タイトルを変えただけで、報告内容はプアなままだったのです。
ステコミは、経営幹部が多く参加します。このままでは「放送事故レベル」の大惨事になってしまいます。
Aさんは、一気に血の気が引いていくのを感じました。
「ステコミなんで、もっときちんとした体裁にできませんか?」
とAさんが問うと
「逆にどうしてほしいんですか?」
とベンダーPMは開き直ります。
情シスAさんは、どうすればいいのでしょうか?
ステコミの意義
そもそも、なぜステコミを開催するのでしょうか?
経営層がプロジェクトをハンドリングし、進めていきたいからです。
経営戦略に沿っているかを適宜チェックし、大きな課題やリスクがあれば、トップダウンで速やかに解決するためでもあります。
また、このステコミを設けることで、ベンダーにも良い緊張感が生まれます。
ユーザー幹部が出席するからには、ベンダー幹部も出席します。
すると、ベンダー側もトップダウンで内部の問題に介入し、良い報告ができるよう自浄作用が働きます。
ユーザー側も、経営層の前で恥をかかないよう、ベンダーと協力して進捗を良くしようとします。
つまり、ステコミの存在自体が、定期的な「チェックポイント」となり、プロジェクトに良い「緊張感」と「規律」をもたらすのです。
ベンダーへの依頼事項
さて、大手ベンダーであれば、ステコミ報告に慣れています。
依頼をすれば、立派な報告書の体裁で、報告してくれるでしょう。
一方で中小ベンダーの場合、「ソレハナンデスカ?」と話が噛み合わないことも珍しくありません。
いくらベンダーに依頼をしても、圧力をかけても、ベンダー側は経験不足なので、状況が好転することはありません。
この場合、ユーザー側からステコミ項目を指定した方がよいと考えます。お互いに変な工数をとられずに、早期に解決するからです。
ベンダーに次のように、記載項目を要求します。
(プロジェクト概況)
・プロジェクト計画書(キックオフ)で示した全体スケジュールをベースに、予定通り/遅れなどの現状を説明してください
・直近1ヶ月の進捗実績を説明してください
・マイルストーンの達成状況を示してください
・進捗状況はなるべく定量的に示してください
(プロジェクト詳細)
・プロジェクト概況で詳細を説明すべき事項を示してください
・チェックポイントがあれば、確認結果を示してください
・進捗状況はなるべく定量的に示してください
(プロジェクト課題とリスク)
・プロジェクトに大きな影響を与える課題/リスクについて共有してください
・ステコミメンバーによる承認、判断、共有が必要な事項について説明してください
(共有事項等)
・プロジェクトに関連して、共有事項や相談事項があれば書いてください
例)体制変更、XXXについての日程調整、年末年始の予定、等
(次月の予定)
・次月のステアリングコミッティのAgendaと予定日を示してください
・次月の主な作業項目とマイルストーンを説明してください
なお、ファイルフォーマットはベンダーにお任せでよいと考えます。
ExcelでもWordでも、PowerPointでも構いません。ベンダーが作りやすい形式でよいでしょう。
これまでの経験上、十中八九はPowerPointで作ってくれます(質は様々ですが…)。
なお、このステコミには、ベンダー側の経営幹部への出席要請も、忘れないようにお願いします。
トップマネジメントの仕組み
「今後ともよろしくお願いします」
会議後、ベンダー幹部がユーザー幹部と談笑していました。
このトップ同士の関係性が大事です。
何か大きな問題が発生したら、トップマネジメントで解決する仕組みができたといえます。
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
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