2019
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現場職人の拒絶反応
「チームメンバー全員で話し合って、変革不要との結論になりました」
ある業務変革プロジェクトの検討会で、現場のキーパーソンAさんが静かに口を開きました。
前回までの検討会で多くの課題が挙がり、「変革は必須」と誰もが思っていたところ、まさかの「不要論」主張でした。
情シスメンバーは予想外の展開に顔を見合わせました。
よく見ると、Aさん以外の業務メンバーは、気まずそうに視線を落としています。
「前回までに多くの課題が出ましたが、それは解決しなくていいのですか?」
と聞くと、Aさんは急に怒り出しました。「変革できない理由」を強めの口調で説明されます。
Aさんの説明は誠意をもって聞きましたが、こちらも誠意をもって説明しました。
「働き方改革関連法で今までのように残業はできなくなります。そのために業務を標準化し、分業し、自動化しないといけません」
「働き方改革は、今期の事業計画の最優先事項です」
「まず今まで通りではいけないという点は、同意いただけますでしょうか?」
Aさんの上司でもある業務部長も出席していましたが、この様子を黙って見守っていました。
部外者の情シスだからできること
実は、業務部長から「Aさんが変革のボトルネック」「Aさん以外は変革を望んでいる」というのは事前に伺っていました。
この状況で、情シスはどのように対応すれば良いのでしょうか?
本来であれば、この業務部長がAさんを含めて部内の統制をとればよいだけの話です。しかし、それが難しいから情シスに頼ってきていると考えられます。
今はAさんなくして現場は回らず、そのAさんの機嫌を損ねると、周囲にも悪影響が出てきます。連携が十分に行われず、Aさん待ちで残業する人も出てきます。
部長とAさんの関係が悪くなると、部全体の空気も悪くなってしまいます。
一方で情シスは、当然ながら部外者です。一時的に恨まれても困りません(あくまで一時的にですが)。
これは、情シスにとって「チャンス」と捉えるべきです。
普通の人には面倒くさいだけの話でも、情シスにはありがたい状況なのです。
一般的に、現場変革を行おうとすると「職人」の抵抗は避けられません。特に「非効率でアナログな作業を完璧にこなしている職人」は激しく抵抗してきます。
本人的には工夫を重ね、効率化し、芸術の域まで昇華させた自身の「聖域」を否定されるからです。
しかし、情シスにとっては「聖域」こそ、踏み込むべき領域。なぜなら、最も変革の効果が高いからです。
一時的に対立したとしても、恨まれたとしても、正しい方向に導き、最後は協力関係を築いていくことが求められます。
これは部外者ならではの役割とも言えます。これを「部の問題」「部長の責任」と線引きするようでは、情シスは下請けのままです。
業務部長は最重要ターゲット
「あのように言ってくれて助かった」
会議が終わり、解散した後に業務部長から話しかけられました。自分では言いにくいことを代弁してくれた、とのこと。
情シスは、業務部長との信頼関係は重要です。
いくら現場と仲良くしても、業務部長の意向にそぐわなければ、プロジェクト自体が存続できません。
業務部長とは定期的に個別で話す場を持ち、意向をきちんと把握しておく必要があります。
こうした積み重ねが、将来のプロジェクトでも情シスが指名されることに繋がります。
貴社のIT部門/情報システム部門は、「聖域」に踏み込んでいますでしょうか?
そして、業務部長との信頼関係を構築できていますでしょうか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。