2020
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パッケージの多すぎる選択肢
「在庫管理機能を持った販売管理パッケージは何社あるでしょうか?」
先月行ったセミナーの参加者にクイズを出しました。
「10社」「20社」「30社」「50社以上」と選択肢を出しましたが、全体の3分の1が正解します。
答えは「50社以上」です。
「さらにこの中で、印税管理など出版社向けに特化したものは何社あるでしょうか?」
こちらは、ほとんど正解者はいませんでした。答えは「10社以上」です。
どのような業界であっても、基幹システムのパッケージは無数にあります。探せば探すほど、たくさん出てきます。
ユーザー企業にとって、選択肢が多いことはメリットです。
問題は「数が多すぎる」ことです。
この中から、どう選んでいけば良いのでしょうか?
RFIでリスクを抑える
パッケージシステムの選定において、一番のリスクは「選定ミス」です。
これは本当に取り返しがつきません。ミスしたらどうなるのでしょうか?
業務に合わないパッケージは、現場を苦しめます。システムの都合で余計な手間が増えます。機能不足なので、エクセルなどシステム外での手作業も増えてしまいます。
システムのせいで、業務フローが複雑になり、属人化の温床になります。
また、パッケージのカスタマイズが大幅に増えます。カスタマイズ費用が一気に膨らみます。パッケージ本体の2倍~3倍は普通にかかります。
スケジュールも、通常納期が6か月とした場合、2年に伸びることもあります。
保守性も悪くなります。年間を通して、ベンダーの保守要員も必要で、システムを維持するための費用が垂れ流しで出ていきます。まるで、大規模なスクラッチ開発のようです。
つまり「選定ミス」は、会社の基幹業務が不安定になり、非効率になり、人件費とシステム費用で、大幅なコストがかかるということです。
パッケージは「選定」が全てです。
自社の業務に最もフィットすることが重要です。
では、どうやって、フィットするパッケージを探していけばいいのでしょうか?
『RFI』をうまく使うことです。
RFIとは、Request For Informationの略で、「情報提供依頼書」と訳されます。
初動調査でRFIを用いて、パッケージの基本情報を確認していきます。「自社の業務」と「パッケージの標準機能」をマッピングし、フィットするかを確認するのです。
「RFP(提案依頼書)で提案をもらえば良いのでは?」と思うかもしれません。
でも当社からすれば「RFPの一発勝負でいいんですか?」と逆に聞き返します。
選定が重要だからこそ、慎重に、確実に、候補を絞り込んでいく必要があります。その具体的なステップが、「RFIの一次選考」⇒「RFPの最終選考」となります。
RFPは通常、3社ぐらいに発行し、最終選考します。そこは問題ないのですが、
「RFPを発行した3社が正しいのか?」
に納得のいく説明ができないことが問題です。まずは、一次選考をしっかりと行うことが重要となります。
RFIは、細かく網羅的に聞くのではなく、パッケージのパンフレット情報をもらうイメージです。広く浅く情報収集するため、質問項目を少なくして、ベンダーの負担を減らし、素早く回答を得るのがポイントとなります。
このRFIで、最も重要な確認は何でしょうか?
それは、パッケージの「標準機能」の確認です。
パッケージの機能が大きく欠落していたら、そもそも話にならないからです。例えば、「印税管理」をやりたいのに、それをもっていないベンダーにRFPを投げても、お互い膨大な時間を無駄にするだけです。
まずは、RFIでざっくりと「要求機能」を列挙して、ベンダーに○×を記入してもらいます。
RFIでは、減点方式を採ります。
主要機能がなければ、減点していきます。そして、減点が少ないベンダーだけを残します。もし、自社として外せない機能が無かったら「一発アウト」にします。
つまり、RFIで「足切り」をしていくのです。
「このパッケージは可能性がないな」というベンダーを外していく作業です。
RFIは10社ほど発行し、そこからRFPの3社ほどに絞り込みます。
「RFIからのRFP」を確立する
スクラッチ開発が主流の時代は、RFPだけで問題ありませんでした。「価格」と「魅力的なシステム提案」さえ確認できれば良かったからです。1つのレースで「一発勝負」で良かったのです。
一方で、パッケージシステムは違います。何よりも先に「自社業務との適合」が重要となります。
そこを慎重に確認しないまま、RFPを3社に絞るのは「博打」と一緒です。
経営層にどう説明すればよいのでしょうか。
選定ミスの被害は計り知れません。その責任を誰がとれるというのでしょうか。
IT部門/情報システム部門の役目は、この「選定」の流れを確立し、運営することです。
貴社のIT部門は、RFIでしっかりと「ふるい」にかけていますでしょうか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。