2022
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ベンダー提案書におけるプロジェクト計画の評価項目は、主に6点あります。
① スケジュール
② 開発手法
③ 移行計画
④ プロジェクトマネージャー
⑤ プロジェクト体制
⑥ ユーザー教育
そのうちの、「⑤ プロジェクト体制」について解説します。
⑤ プロジェクト体制の見どころ
プロジェクトマネージャーと同じく、プロジェクト体制もプロジェクトの成否を分かつ重要なファクターです。
プロジェクトマネージャーそのものは、上記の「④ プロジェクトマネージャー」で確認するとして、プロジェクトマネージャー以外の体制を確認していきます。
プロジェクト体制とは、プロジェクトにおける「戦闘力」といえます。プロジェクトの難しい課題や、分かりにくい業務の仕様を検討していく上で、メンバーの質はかなり重要です。そして、それらメンバーがチームとして統率されていないといけません。
このメンバーの「個々の質」と「統率」をみていく手掛かりは何でしょうか?
それは「バイネームで書かれているか?」です。
つまり体制図に「個人名」がそれぞれ明記されているかを確認していきます。
なぜかといえば、バイネームで書かれてあるメンバーは「(プロパー)社員」の可能性が高いからです。すなわち、自社の部下や同僚であるため、プロジェクトマネージャーは遠慮なく指揮がとれます。
バイネームは、付き合いの長い、信頼のおける協力会社のメンバーである可能性も高くなります。この時点で協力会社メンバーの名前を出せるということは、過去も一緒にプロジェクトをやってきた可能性が高く、こちらも統率に支障がないと考えられるからです。
しかし、大半のベンダーは、提案の時点では、ほとんど個人名は出してきません。なぜなら、書けないからです。案件がとれてから協力会社に声をかけて、人をかき集めるためです。
大手のベンダーになればなるほど、「下請け構造」が完璧に確立されています。その方が、ベンダーに都合がよいからです。柔軟に体制を大きくできて、荒稼ぎできます。そして、不況になれば、クビにできます。社員という固定費を抱えずに、顧客の需要に合わせてリソースを調整できるのです。
そのため、プロジェクトマネージャーだけ社員で、リーダー以下は全て協力会社メンバーというのはめずらしくありません。もっといくと、営業だけ社員で、プロジェクトマネージャーすら協力会社というケースもあります。
つまり「バイネーム」で書けないということは、発注後に協力会社メンバーを中心にアサインされ、お互い初めて一緒に仕事をするメンバー、「烏合の衆」に近くなるのです。
そのため、統率力が落ちる可能性が高くなります。
協力会社メンバーでも、運よくメンバーに恵まれたら、即席でもうまくいくでしょう。しかし、その確率はかなり悪いといえます。
「プロジェクトマネージャーだけ社員」というベンダーを今まで多く見てきましたが、そのベンダーにはノウハウがおどろくほど残っていません。外注(協力メンバー)に丸投げするだけで、プロジェクトの苦労も含めて、すべて丸投げだからです。
ちなみに、そのプロジェクトマネージャーには「外注の原価管理」と「丸投げ進捗管理」という残念なスキルだけが異常に伸びていきます。
一方で、まれに体制図のすべてに「バイネーム」で書かれた提案書をみかけます。そのようなベンダーと実際に何度かプロジェクトをしたことがありますが、すばらしく腕が立ち、統率されたチームだと感じました。
業務知識やノウハウが豊富で、チームワークが良い。それは顧客にも波及して「ワンチーム」として、プロジェクト全体に良い作用をおよぼしたと考えます。
ただし、そのような「バイネーム提案書」は、提案金額が高いのも事実です。そのトレードオフが悩ましいともいえます。
ベンダー体制の闇を避ける
ベンダーの提案書で「プロジェクト体制図」は、ほんの1ページにすぎません。しかし、このような観点で見ていくと、スルーできずに評価対象となることがわかると思います。
システム開発の業界は「多重下請け構造」で様々な問題が出ています。「バイネーム」で書かれている提案書は稀ですが、その視点を持つことでベンダーへの牽制にもなります。
原則として、下請けの階層が深いほど問題は大きくかつ多くなっていきます。
その辺りも後日のプレゼンテーションで、何気なく聞いてみるのも良いでしょう。
(プロジェクト計画の各項目解説)
【提案評価その4】プロジェクト計画「①スケジュール」をどう読み解くか?
【提案評価その4】プロジェクト計画「②開発手法」をどう読み解くか?
【提案評価その4】プロジェクト計画「③移行計画」をどう読み解くか?
【提案評価その4】プロジェクト計画「④プロジェクトマネージャー」をどう読み解くか?
【提案評価その4】プロジェクト計画「⑤プロジェクト体制」をどう読み解くか?
【提案評価その4】プロジェクト計画「⑥ユーザー教育」をどう読み解くか?