プレゼンのアジェンダをベンダーに提示する

プレゼンの目的が明確である以上、プレゼンはその目的にそった進行をしなければなりません。ベンダーに自由にしゃべらせてしまうと、確認が十分におこなえず、消化不良のまま時間切れとなります。

ベンダーの立場でも、何を中心に、どのようなタイムスケジュールで進めてよいかがわからないと、逆に困ってしまいます。そのため、こちらから何も指定しないと「当日はどのように進めたら良いでしょうか?」と質問がきたりします。

ベンダーとしても、目的やタイムスケジュールがあったほうが準備がしやすく、当日も堂々と話しやすくなります。

そこで、ベンダーから提案書を受け取り、プレゼンの日程を調整するタイミングで、プレゼン当日の「アジェンダ」を提示します。

プロジェクトの性質によって多少のアレンジは必要ですが、基本的には次のようなアジェンダとなります。
 

アジェンダ(サンプル)


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アジェンダ項目の解説

1. 提案書をもとにプレゼン

このアジェンダの重要なポイントは、プロジェクトマネージャーに「しゃべらせる」ことです。そのため「1.提案書をもとにプレゼン」で直接説明してもらう項目をあらかじめ指定しておきます。

なぜなら、放っておくと全部営業の方がしゃべって、全部の説明が終わってしまうことがあるからです。

通常、プレゼンでは営業担当者が同席して、プレゼンの場をリードします。営業の立場としては「見込み客」に対して積極的にコミュニケーションをとることが仕事です。そのため、営業の方が話す時間が多くなるのは、ある程度は仕方ありません。

営業として、会社として売り込みたい部分、宣伝したいページがあることは理解できます。会社の歴史や強み、基本情報などは、むしろ営業が説明した方が分かりやすく、営業も説明に慣れているでしょう。

しかし、油断すると提案書の説明のほとんどを営業の方がやりかねません。

そこで、百歩譲って、営業が話すのは認める。でも、プロジェクトマネージャーの「人となり」も確認したい。

では、どこをプロジェクトマネージャーに話してもらうべきでしょうか?

それが「プロジェクト計画」です。

今後、そのプロジェクトを任せて、ゆだねる相手がプロジェクトマネージャーです。そのプロジェクトマネージャーが、プロジェクト計画を一番熟知していないのはおかしい。

どのように考え、どのような言葉を用い、どのようなトーンや表情で話しをするのか。その計画は具体性があり、自信に満ちているのか。

つまるところ、プロジェクトが始まった後の定例会の「予行演習」でもあります。このプロジェクトマネージャーに任せた場合の、将来のイメージを重ね合わせていきます。

また、プロジェクトマネージャー自身の「プロフィール」を、本人からきちんと説明をもらいたい。紙面上では経歴を盛ることができるので、具体性があるかどうかを、本人の説明で確認していきます。

「開発の進め方」もプロジェクトマネージャーのノウハウや経験がにじみ出るので、具体的に話してもらいます。

近年は、ウォーターフォールではなく、アジャイルやスパイラル開発も一般的になっています。その進め方の説明が具体的かどうかで、本当にやったことがあるのか、上っ面だけではなく、現場で指揮をとってきたかどうかが分かります。

「データ移行」は、プロジェクトの難所の1つです。経験者はわかると思いますが、必ずタフなシーンが訪れます。

現行データの不備だったり、マッピングができなかったり、コード変換やステータスの思想の違いなど、移行は課題のオンパレードで、とても苦労します。

このデータ移行を当事者として経験しているなら、エピソードを交えた説明や具体的に想定するタスクなど、話しのネタには事欠かないはずです。

ここをさらっと表面的な話で逃げるか、力説してくれるかで、プロジェクトマネージャーの力量がにじみ出ます。

それ以外にも、プロジェクトの特性に応じて、プロジェクトマネージャーに確認したいことがあれば、質問を準備しておきます。

例えば、次のような質問です。

「要件定義後の金額の上振れをおさえるために注意するポイント」
「今回、活用するローコードツール○○○の詳細」
「現場個別のやり方やイレギュラー業務をどうやったら標準化していけるか」

ここで、経験に基づく具体的な回答が得られたら、信頼度が高くなります。
 

2. 画面デモ

「2.画面デモ」ですが、パッケージを想定した項目となります。

スクラッチ開発の場合は画面を見せることが不可能なので、その場合は、この項目は無くして、「1.提案書プレゼン」の方に時間を多く割きます。

この画面デモも、ベンダーに好き勝手にしゃべらせるのはもったいないです。

自由にデモをさせると、そのパッケージの「良いところ」だけしか説明されません。

つまり「印象操作」されやすくなってしまいます。

そこで、どんなデモをやってほしいかを、こちらから指定します。

一番てっとり早いのは、RFPで渡した「業務フロー」のうち、「ここからここまでの流れを画面で操作してほしい」と指定することです。

例えば「入金消し込み」を指定して、「手動で消し込む場合と、自動で消し込む場合の両方を見せてほしい。自動消し込みはパターン登録の方法からやってほしい」など、具体的な注文をつけることが効果的です。

現場ユーザーが自身の業務と重ね合わせることで、導入イメージをしやすくなり、質問も活発になるからです。
 

3.質疑応答

最後に「3.質疑応答」の時間をたっぷり設けます。

ここで、提案書や当日のプレゼン、画面デモについて、不明点をどんどん聞いていきます。私はたいてい、アジェンダ上ではこの質疑応答を「30分」と指定します。しかし、実際ははるかにオーバーして「60分」コースとなります。

でも、それでも良いと思っています。「30分」という制約を設けることで、質問するメンバーにも自制心がはたらきます。「時間オーバーしてスミマセン~」と、「巻き」で話してくれます。

それに、アジェンダに最初から質疑応答「60分」と書くと、参加者に重たい印象を与えてしまいます。かといって「15分」だと短すぎるので、「30分」がちょうどいいのです。

そのため、全体としてはだいたい「1時間30分」としておき、いつも裏では会議室の予約を2時間で押さえています。
 

プレゼンも「アップル to アップル」にする

これらをアジェンダとしてメールに書いて、ベンダーに通知しておきます。

事前に伝えることで、ベンダー側は求められていることのみの説明に専念できるので、準備しやすくなります。自社も聞きたいことを効率的に聞けて「アップル to アップル」で評価もできるようになります。

つまり「Win-Win」となります。

ベンダーにプレゼンをお願いする際は、必ず事前に「アジェンダ」を伝えるようにしましょう。
 

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