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惜しまれつつ異動した情シス部長から考える理想像

2023

3/08

惜しまれつつ異動した情シス部長から考える理想像

情シス最大の事件

「え?マジで!?」

情シスメンバー全員に激震が走りました。

その現場では、毎年3月に異動の内示があります。

あんな人やこんな人、いろんな人の異動話が飛び交い、現場への影響は小さくありません。

しかし、情シスの現場において、この異動ほど影響の大きなものはありません。

情シス部長の異動です。

情シスメンバー全員が激しく動揺し、私も思わず大きな声で叫んでしまいました。

それほど大きな存在でした。

ここであらためて考えてみます。

情シス部長の理想像とは、どのようなものでしょうか?

スペシャリストではなくゼネラリスト

あらためて言うまでもないですが、情シスの活動範囲は広いです。

広すぎます!!

パソコン、サーバー、ネットワーク、クラウドなどのインフラ周り、昨今リスクが大きくなっているセキュリティ関係。

基幹システムや個別システム、共通アプリやツールなどの管理。

そして、これらに対して日々発生する問合せ対応。

正直にいえば、情シス部長はこれらすべての領域で「専門家」である必要はないと考えます。

ただし、部下から相談がきたら、その話の内容を理解し、適切な指示を出す必要はあります。

場合によっては他部署への調整に、自ら出向く必要もあるでしょう。

多様な情シスメンバーに寄り添い、フォローするためには、狭く深くの「スペシャリスト」ではなく、広く浅くの「ゼネラリスト」としての資質が求められます。

情シス部長はとても忙しい、ということは理解しています。

しかし、話しかけられても「俺は忙しい」と顔すら上げない部長はどうなのでしょうか?

情シス部長は忙しいかもしれませんが、情シスメンバーも同じように忙しいのです。そのメンバーが相談にきています。

どんなに忙しくても、部下から相談がきたら時間を割いて、耳を傾け、寄り添う姿勢が求められます。

任せることは必要ですが、丸投げして放置しすぎると、信頼されず、相談されず、情シスを統率できなくなってしまいます。

トップレベルでのファシリテーター

次に、もう少し全体の視点で考えてみます。

情シスはITプロジェクトにも深くかかわります。

「IT」がつくから当然ですが、それは「ITインフラ担当」の役割だけではありません。

基幹システム導入プロジェクトなどは、全社を横断します。

そこに求められる情シスは、客観的な立場での「プロジェクト管理・推進」です。

プロジェクトにおいては「IT」と「業務」と「経営」がバランスよく円滑に連携していく必要があります。

それらを「橋渡し」するのが情シスであり、政治面を含めてトップレベルで調整するのが情シス部長の責務なのです。

ここが機能しなければ、大きな課題は解決できずに、全社的な変革は失敗に終わります。

つまり、情シス部長は「業務部門」や「経営層」のトップと対等に話せるだけの最低限の知識が必要となります。

整理すると、情シス部長は、高いレベルでの「ゼネラリスト」と「ファシリテーター」の資質が求められます。

情シス部長は、IT技術やスキルがあるに越したことはないですが、ITと業務と経営の橋渡しが一番求められている役回りです。

それらの活動が、情シスをより会社の中枢に引き上げ、情シスを次のステージに導きます。

情シスの役割が多様化していく中で「情シス部長の器」が「情シスの器」を決めるのです。

情シスは新しいステージへ

冒頭の情シス部長は何がすごかったのでしょうか?

どんなに忙しくても部下から相談がきたら、インフラだろうが業務システムだろうが、きちんと時間をつくり、その人と向き合いました。

決して専門家ではありませんでしたが、理解に努めようとします。

そして、自分にしかできない経営層や業務部門長のトップ交渉を速やかに行い、部下の障害物を取り除いていきました。

そのため、部下はいつも思いっきり職務を遂行し、成果をあげることができました。

当然ながら、部下全員からリスペクトされ、信頼されています。

そんな情シス部長が異動となったので、激震が走るのも当然でしょう。

影響が大きすぎて、今動いているプロジェクトがどうなるか想像もつきません。

しかし、その人が広げてくれた「情シスの器」を大切にし、今後も進化させていきたいと思います。

(情シス部長A様へ)
今まで情シス部長として、情シスを新しいステージに導いてくださり、ありがとうございました!

次の異動先でのご活躍を祈念しております!

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御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。