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なぜIT部門・情シスがプロジェクトマネージャーをやってはいけないのか?

2023

4/12

なぜIT部門・情シスがプロジェクトマネージャーをやってはいけないのか?

体制図に書かれているPMは誰?

「やりたい気持ちはわかりますが、PMは現場から出してください」

ある現場でプロジェクト計画書を作成していました。

その中で、プロジェクト体制図を見てみると、PM(プロジェクトマネージャー)に情シスメンバーの名前が書きこまれていました。

聞けば、今までの重要なプロジェクトすべてに関わり、ノウハウも経験も誰よりもあると言います。「自分しかできない」と。

実は、このパターンは非常に多いのです。

そして、その顛末を多くの現場で見てきたからこそ、渋る反応をスルーして話を進めます。

「仮に現場から出すとしたら、誰が候補になりますか?」

なぜ、情シスがPMをやってはいけないのでしょうか?

情シスのメリットとデメリット

情シスがPMをやってはいけない理由はシンプルです。

「デメリット」が大きすぎるからです。

(情シスPMのデメリット)

・現場の当事者意識が希薄になる
・現場の業務要求に踏み込めない
・現場が言うことを聞いてくれない
・システム導入が目的になりがち
・ベンダー調整が技術論になりがち

細かな説明は不要だと思いますが、どれも大きなデメリットです。

これを情シスではなく、ユーザー部門がPMをやるとどうなるのでしょうか?

このデメリットがメリットに変換されます。

(ユーザーPMのメリット)

・現場が当事者意識をもって進められる
・業務要求を主体的に進められる
・現場をトップダウンで動かせられる
・業務改革が目的でシステムは手段になる
・ベンダー調整は業務要件が中心となる

こうして挙げてみると、ユーザーがPMをやる理由しかないと思います。

では、情シスは役に立たないのでしょうか?

そんなことは全くありません。

むしろ、情シスこそが成功の鍵を握ると考えます。

(情シスのメリット)

・全社的かつ客観的な立場で判断できる
・ほぼ全てのプロジェクトに関わることができる
・プロジェクトノウハウを蓄積し、還元できる
・システムや技術要件に強い
・ベンダーとの交渉や調整が得意
・経営層と業務部門とベンダーの橋渡しができる
・関連部署や関係ベンダーなど顔が広い

このメリットを最大限に生かす役割が「PMO」です。
(PMO:Project Management Office)

情シスは、プロジェクトの「レギュラー」として参加できる唯一の部署です。なぜなら、プロジェクトには必ずITやシステムが絡むからです。

そのため、過去の膨大なプロジェクトの「アーカイブ」にアクセスできます。それらのノウハウを今回のプロジェクトに持ち込むことが可能となります。

情シスが客観的な立場で「ファシリテーション」することで、プロジェクトにテンポの良い流れを作り出し、進めていけます。

情シスという「潤滑油」は、社内外の関係者をつなぎ、コミュニケーションを促進することができます。それはリスクに対して先手を打つことになります。

情シスは「自社業務」と「IT」の両面で、ベンダーに対して主導権を握ることができます。

プロジェクトは「経験」がモノをいう世界でもあります。

数をこなせばこなすだけ、ドキュメントのテンプレートも溜まり、マネジメントやファシリテーションの技も磨かれます。

つまり、プロジェクトノウハウがどんどんブラッシュアップされていきます。

その結果、情シスが中心となり、プロジェクトの成功を積み上げ、好循環を生み出していくのです。

PMOのやりがい

PMOはPMという神輿(みこし)を担ぎます。

PMの右腕であり、ナンバー1ではないですがナンバー2の存在といえます。

見方を変えると、PMを裏で動かす「黒幕」ともいえます。

裏で仕切る「プロデューサー」ともいえます。

全体を掌握し、キャストを効果的に配置し、知略をめぐらし、局地戦の成功を積み上げていきます。

時には「遊撃隊」として自ら課題に対処し、ボトルネックを解消します。

つまり、成功となる鍵を常に握り続けている存在こそがPMOです。

PMは1回きりですが、PMOはずっと続けられます。

PMOは情シスしかできない。私はそう考えます。

そして、そんなPMOが一番カッコイイと思っています。

PMとPMOの棲み分け

冒頭の情シスメンバーには、PMOとしてプロジェクトを仕切ってもらいました。

ファシリテーションはさすがの安定感です。

すごく忙しそうに連日、現場や会議室を飛び回っていました。

後日、そのメンバーに話を聞いてみました。

「自分にはこっちの方が合っていました!」

最初は不満だったようですが、実際やってみたらPMとPMOで棲み分けができたようです。

現場をどう動かすかはPMに任せられるので、自身はPMOの役割に専念できたとのことです。

「むしろ黒幕がいい」と言っていました(笑)。

そして、次のプロジェクトに向けて、ノウハウの標準化も進めているそうです。

貴社の情シスは、PMではなくPMOとして、会社を成功のスパイラルに導いていますでしょうか?

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御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。