2024
12/13
GAITとは
「GAIT300点以上の人材だけを紹介します」
ある情シスの現場で、IT人材紹介会社から説明を受けました。
はて?「GAIT」って何ですか?
ということで調べてみました⇒(参考:https://www.gait.org/)
人財のITスキルを可視化し、スキルポートフォリオを明確化。GAITは600社以上、15万人以上の受験実績があり、企業の人財育成、配置、評価、採用などにご活用頂いております。
なるほど。ITスキルを可視化して、採用に活用できるということですね。
試験は2種類あるようです。(2024年12月1日時点)
e-GAIT2.0(ビジネスパーソン向け):80問、30分、3,300円
4つの選択肢から正解を選ぶ方式です。1回の試験で 7フィールド20カテゴリー のITスキルを測ることができるようです。
インフラストラクチャ、OS&ミドルウェア、アプリケーション、クラウド、セキュリティ、DX技術、DX利活用
そこで、私が実際に受けてみることにしました!
オンラインで受験できるのは便利ですね。クレジットカードを登録し、申し込みをしたら、10分後には受験できました。
一応書いておくと、私はITベンダーで10年間、システム開発をやっていました。実際にプログラミングをして、サーバーにコマンドを打ち込み、毎日SQLを叩いていました。IPA資格も7個取りました。
ただし・・・15年以上も前の話です。
もう「現役エンジニア」ではないので、恥をかくかもしれません。ですが、せめて情シスに役立つ情報は持ち帰りたいと思います。
果たして、田村は人材紹介の最低ライン300点以上はとれるのでしょうか。
そもそも、このGAITは情シス採用で有効なのでしょうか?
GAIT2.0受験結果
スコアは、990点満点で「328点」でした。
かろうじて、人材会社で紹介してもらえるようです(苦笑)
GAITを受けると、スコアレポートが発行されます。各カテゴリの得点率が記載され、レーダーチャートでスキルバランスが可視化されていました。
最後に総評コメントが書かれていました。
基礎レベルまで、あと一歩のようです(苦笑)
実際に受験した感想としては「現役エンジニアでないと答えられない」と思いました。
プログラムの書き方や関数名、サーバーのコマンド、SQLの構文などが次々と出題されます。
SQLは、昔とほぼ変わっていないので答えられました。一方で、新しいプログラム言語の問題はまったくわかりません。AWSやGCPの機能名やオプション名、設定方法なども、まるで歯が立ちません。実際に担当して手を動かしている人でないと、絶対にわからないと思いました。
そして、時間が圧倒的に足りません。60分で160問ということは、1問あたり22.5秒で答える必要があります。
一応、4択ですが、どの選択肢もそれっぽく、知らない人にはすべて正解にみえます(苦笑)
知っている問題だけはすぐに答えられますが、それ以外は悩んで時間を食いつぶして、最後に圧倒的に時間がなくなります。
この時間の短さは、オンライン受験ならではの「カンニング防止」もあるかもしれません。
調べているうちに時間がどんどんなくなる。またブラウザを切り替えたら、試験が中断されました。ログイン画面からになってしまい、さらに時間が削られます。
多くの問題を「即答」させることで、日常的に身についている知識しか正解できない仕組みだと感じました。
e-GAIT2.0受験結果
GAIT2.0があまりにもエンジニア向けだったので、e-GAIT2.0(ビジネスパーソン向け)を受験してみました。こちらの方が情シス向けかもしれません。
結果は、300点満点で「174点」でした。
こちらの方が、やや評価が高くなりました!
ただですね、こちらもGAIT2.0とさほど内容は変わりませんでした。トラブルシューティングやチューニングなどの応用問題は減ったものの、出題範囲は同じです。プログラミングやSQL、コマンド、サーバー設定などは、私にとっては相変わらず難しい問題ばかりでした(苦笑)。
こちらも「エンジニア」向けだと感じました。
情シスとしてのGAIT有効性
おそらく「ベンダー側」の採用においては、有効だと思います。実際に手を動かせるエンジニアが欲しいからです。
では、「情シス側」としては、有効なのでしょうか?
これは、求める役割によって変わってきます。
情シスとして「エンジニア的な役割」には有効でしょう。
・オンプレ運用/保守/トラブルシュート
・クラウド運用/保守/トラブルシュート
・セキュリティ運用/保守/トラブルシュート
・システム内製/開発
・技術調査/PoC
この場合は、即戦力として期待ができます。特に「外注」から「内製」にシフトしていく方針の企業には、マッチすると思います。また、情シス的にアウトソーシング可能な領域でもあるため、派遣社員の選考においても有効でしょう。
一方で、以下の役割では有効とはいえません。
・IT戦略策定
・PMO(プロジェクト管理/推進)
・基幹システム保守/ベンダー調整
・ヘルプデスク
これらに共通するのは「コミュニケーション」スキルです。さらに、基幹システムでは、技術よりも「業務知識」の方が問われます。ヘルプデスクでは、プログラミングよりも、デバイスや業務システムなどの「システム管理者としての知識」の方が問われます。
つまり、情シスが求めている役割によって、GAITの有効性は変わってきます。
情シスの自己啓発
別の視点からみた場合、試験は「自己啓発」の側面があります。
スコアが高かったら「一定の努力ができた人」と捉えることもできます。IT技術を勉強する「姿勢」が可視化されたとも言えます。
むしろ、情シスにとっては、こちらの方が有効かもしれません。
情シスメンバーの底上げに繋がるからです。定期的に受験することで、ゲーム感覚で楽しんだり、メンバー間で競争したり、IT技術へのモチベーションを維持したりできます。
情シスで予算をとって、定期的に受験するのは面白いと思います。
各メンバーのスキルが可視化されるので、情シス管理者が「組織設計」に役立てることもできるでしょう。
GAITを正しく捉える
情シス採用で、GAITを参考にするには条件があります。
・運用/保守/トラブルシュートで実際に手を動かせる人がほしい
・システム内製開発でプログラミングできる人がほしい
この場合、GAITは参考になるでしょう。
ただし、他の国家資格(IPA)、民間資格(ベンダー資格)と同列に並べて、総合的に評価するのが良いと思います。
その上で、面接において、これまでの経歴・実績などの確認を通じて「コミュニケーション」や「業務知識」などを見ていくことになります。
現在は、IT業界全体で「人手不足」です。
選り好みをしている余裕はありません。とはいえ、条件を下げすぎて、安易に採用してしまうと、長期にわたり苦しむことになります。
採用は、長期の取り組みとして、焦らずに進めましょう。根気強くやっていると、ひょんなことから優秀な人材に巡り合えることもあります。これは実体験で何度もありました。
貴社のIT部門・情報システム部門は、GAITの有効範囲を正しく認識し、活用できていますか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。