2020
2/19
現場のストレスはピーク
「パッケージは、かゆい所に全然手が届かなくて大変です」
PMOを務める情報システム部のAさんが、ため息交じりにお話しされました。
・今までのエクセルの方が早かった
・今まで出していた帳票が出せない
・今までやっていたチェックができない
・自由にデータ修正ができなくなった
・いちいち申請承認が必要で面倒になった
今まではスクラッチ開発したシステムを使っていました。ところが今回はパッケージシステムを導入します。
システムの動きが全く異なるため、ユーザーはとにかくストレスを感じている様子。Aさんにその不満の矛先が向いているようです。
「それは良かったですね~」
田村は笑顔でお答えしました。
パッケージの最も重要なメリット
今一度、整理したいのですが、パッケージのメリットは何でしょうか?
・低コスト
・短納期
はい、正解です。では、デメリットは何でしょうか?
・システムの自由度/柔軟性がない
はい、ここです。短絡的に考えるとその通りですが、本当にそれはデメリットなのでしょうか?
当社では、以下のように考えています。
パッケージの本当の魅力は、自由度/柔軟性がないこと。
なぜでしょうか?
外部からの大きな制約こそ、最も効果的な「標準化」に繋がるからです。
社内だけで「標準化」を検討してみると分かります。中途半端で小手先の「標準化」しかできません。ユーザーは自分たちでリスクを負わず、安全で、実現容易な変更案しか出してきません。
業務フローで言えば、枝葉の細かい部分だけです。
ところが、パッケージは違います。
業務フローの根幹を変える制約が押し付けられ、強烈なストレスが発生します。当然、ユーザーは猛反発しますが、そこはトップダウンで押し切る必要があります。
そこで初めて、大きな「標準化」に向かうのです。
自ら血を流して、痛みを伴いながら、大きな変革へと向かわざるを得なくなります
良いパッケージには「他社のベストプラクティス」が詰まっています。その黒船に乗って、「標準化」に向かって行くのです。
(ただし、悪いパッケージを選んでしまうと、話が違ってきます。この辺りは次回のコラムで書きます。)
裏を返せば、大幅なカスタマイズやスクラッチ開発を選択するということは、本当の意味での「標準化」を諦めること、とも言えます。
制約も使い方次第
事業戦略として、その事業は独自性が強く、競争力の源泉であれば、スクラッチ開発で作り込むべきでしょう。もっと言えば、内製化して、柔軟性とスピードを確保できる体制を構築すべきです。
一方で、属人化を解消し、業務の「標準化」を目指すのであれば、パッケージの「不自由さ」を利用すべきです。
身内だけだと大きな変革は難しいですが、外圧にさらされることで、大きな変革も可能となります。
貴社のIT部門/情報システム部門は、パッケージの「制約」をうまく活用できていますでしょうか?
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情シスコンサルタント
田村 昇平
情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。
支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。
多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。
また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。
「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。
著書の詳細は、こちらをご覧ください。