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大手ベンダーの「ロックイン」を解消する勇気

2020

9/03

大手ベンダーの「ロックイン」を解消する勇気

ロックインは負のスパイラル

「絶対にうまくいかないと思いますよ」

ベンダー選定で落選した大手ベンダーの営業部長から言われました。

実に20年もの間、その大手ベンダーに「ロックイン」されていました。

コスト削減が毎年のテーマになっているものの、削れるものは全て削ってきました。

各種システムのアカウント数を減らして、現場から猛反発を受けました。ハードディスクの容量を減らそうと、消してはいけないファイルを消して大トラブルにもなりました。外注メンバーの人数を減らして、保守も回らなくなりました。

何度も絞った雑巾をさらに絞って、最後の1滴を出すために生地がボロボロになっているかのようです。

なぜ、そこまでコスト削減が苦しいのでしょうか?

それは、その大手ベンダーの「基本料金」が高すぎて、それだけで予算オーバーになるからです。

改修したくても多額の費用がかかるため頼めず、システム外でエクセル作業が横行し、業務フローは目を覆いたくなるほどグチャグチャでした。

業務は属人化し、一部の人間に仕事が集中し、繁閑調整ができず、現場は悲鳴を上げていました。

攻めのITにも投資したいのですが、全ての予算が保守に取られてしまいます。

まさにロックインの「負のスパイラル」です。

IT部門・情報システム部門のプライド

なぜ、情シスは大手ベンダーを選ぶのでしょうか?

その情シス担当はこう言いました。

「大手なので安心ですし、なんでも相談に乗ってくれますし、自分たちだけでは絶対にできないですし。我々はインフラの保守やヘルプデスクもあり、時間がないんです。確かに高いんですけど、仕方ないと思います」

確かに、情シスにとって大手は「おんぶにだっこ」で全部やってくれるでしょう。大手の営業は、情シスをヨイショしてくれます。パワーポイントでキレイな資料を提出してくれるので、そのまま経営報告でも使えます。

大手ベンダーは「マネジメント」が得意で、管理資料をきちんと提出してくれて楽です。大型プロジェクトにおいても、自分たちが「マネジメント」するから大丈夫と自信満々に言ってきます。不安を抱える情シスにとっては、この自信満々な態度は刺さります。救世主に見えます。
(大型プロジェクトになっている理由は、その大手ベンダーの価格が高いからですが。)

情シスにとっては、有名な大手ベンダーと取引している方が「高尚」な仕事をしている気になります。大手ベンダーに指示を出すと、偉くなったような気もしてきます。

そして、情シスは心の中では「高いな」と思いつつも、いなくなると自分たちが困るので、いろいろな理由をつけて、大手ベンダーに大金を支払います。

しかし、よく考えてほしいのです。

本当に、そんな大金を払ってまで、大手ベンダーが必要なのでしょうか?

情シスが楽をしたいから、リスクを取りたくないから、

ではないでしょうか?

大手ベンダーが恩着せがましく言う「マネジメント」は、そもそもユーザー側とベンダー側の両方で必要です。むしろ、ユーザー側の方が範囲は広く、重要です。

そのユーザー側のマネジメントを放棄して、ベンダーに任せるなんてありえません。「ロックインしてください」と両手を差し出して手錠をかけてもらうようなものです。

自分たちでリスクを負ってでも、自分たちのマネジメントで成功に導きたいという気概はないのでしょうか?

情シスは、インフラやIT機器の運用・保守という「安全地帯」に逃げればいいのでしょうか?
 
 
 
違います。
 
 
 
むしろ運用・保守はアウトソースしてでも、情シスはITやシステムをテコにファシリテーションして、業務改革に導く存在であるべき。情シスは窓際族ではなく、経営の中枢に行くべきです。

逃げ腰ではなくチャレンジ思考で、貪欲に会社の成長にかかわるべきです。

大手に「マネジメント料」で大金を払うぐらいなら、リスクをとって、情シス主導で進めたほうがいい。

なぜなら、プロジェクトの成否は「ユーザー側の力量」にかかっているからです。

だからこそ、情シスのPMOは重宝されるのです。ベンダーに依存するなら、情シスは要りません。業務部門が大金を払って、大手ベンダーにロックインされればいいからです。

企業には「格」があります。「格」にふさわしいベンダーを選ぶだけです。大手企業であれば、大手ベンダーと付き合うのは自然です。

ただ、相談に来る企業のほとんどは、不相応に大手ベンダーを選んでいます。無理がたたり、改修コストを捻出できず、現場にしわ寄せが行ってしまいます。

本当に現場を思うなら、適切なコストのベンダーを選び、かつ情シスが体を張って現場に寄り添うべきです。

田村の経験からいえば「ベンダー選定をしっかりする」という前提で、大手から中小のベンダーに乗り換えても、うまく行きます。むしろ情シスが育つので、良いことしかありません。

もともと情シスは技術力があるので、そこにチャレンジ思考が身に着くだけで、情シスは大きく変わります。

情シスはロックインを断つと成長する

冒頭の大手ベンダーから「捨て台詞」を浴びたプロジェクトも、結局は上手くいきました。

正直に言うと、多くの苦労はありました。当時は色々あり、本当に辛かったです。。。

でもその分、情シスメンバーが成長しました。今ではベンダーと激しく喧嘩したり、社内でもプロジェクトを複数掛け持ちして縦横無尽に走り回ったり、頼もしくなりました。

「あれだけの大金を払って得られたのは何だったのでしょうか?」

情シスPMOのメンバーがボヤいていました。

当時のロックインメンバーは定年で全員退職しました。情シスの閉塞感はなくなり、明るい未来を感じます!

貴社のIT部門・情報システム部門は、大手ベンダーに「ロックイン」されていないでしょうか?

ロックイン解消の勇気が、情シス改革の第一歩です!

弊社はその勇気を支援いたします。

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御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか

情シスコンサルタント
田村 昇平

情シス(IT部門、情報システム部門)を支援するコンサルタント。

支援した情シスは20社以上、プロジェクト数は60以上に及ぶ。ITベンダー側で10年、ユーザー企業側で13年のITプロジェクト経験を経て、情シスコンサルティング株式会社を設立。

多くの現場経験をもとに、プロジェクトの全工程を網羅した業界初のユーザー企業側ノウハウ集『システム発注から導入までを成功させる90の鉄則』を上梓、好評を得る。同書は多くの情シスで研修教材にもなっている。

また、プロジェクトの膨大な課題を悶絶しながらさばいていくうちに、失敗する原因は「上流工程」にあるとの結論にたどり着く。そのため、ベンダー選定までの上流工程のノウハウを編み出し『御社のシステム発注は、なぜ「ベンダー選び」で失敗するのか』を上梓し、情シスにインストールするようになる。

「情シスが会社を強くする」という信念のもと、情シスの現場を日々奔走している。

著書の詳細は、こちらをご覧ください。